2013年7月2日火曜日

瀬戸内の島の特別支援学校相談日でした

年間数回ですが、瀬戸内に浮かぶ島にある特別支援学校に作業療法の相談日として訪問しています。今日はとても天気の良い正直ドライブ日和。しまなみ海道を車で行くこと三原から約1時間。因島の入り口にある特別支援学校です。

この学校は、以前は地域の小学校として使われていました。学校としてはめずらしく借地に立っています。今からなんと130年くらい前、地域に学校が無いことを懸念した地元の人たちが寄付金を集めて土地を買い、整地しそこに教育委員会が学校を建てたのが始まりだそうでして、その名残で運動場の端っこには未だに130年前に寄付金を拠出した人たちであろう石碑が並んでいます。また、地元の名士の方の名前がある部屋もあります。ですので、運動会も特別支援学校の学生さんだけでなく、地元の町内会の運動会も合同で開催されています。

私が担当するのは主に高等部。今日は高校3年生の皆さんと1日時間を共有しました。高等部を卒業するとほとんどの方が就職します。しかし、これまでこの学校から一般企業に就職したのは昨年度が初めての1名です。この数字にはいろんな意味が含まれています。

一般企業に就職する希望がないのか?というとそれは違います。多くの方は希望を高等部の最初の頃には持っています。しかし、卒業が近づくにつれて次第に無理なことに気づきます。
ひとつは、一般企業に就職する場が無いことです。島には企業がありますが、多くは造船関係や農業や漁業です。造船関係はいろんな企業がありますが、普通でも雇用がありません。また、重労働でも知られており、なかなか障害者が出来る仕事か?と言われると難しいのが現状です。
農業や漁業も求人はほとんどありません。普通高校を卒業しても就職は多くの方は島を出て就職しているようです。

では、島を出て就職しようとすると、今度は通勤が出来ません。公共交通機関で本土に行くにはバスですが、これが最寄のバス停から尾道駅まで約45分。尾道駅から公共交通機関で行けるような場所に会社があればいいのですが、これが障害者が雇用されている企業の多くが郊外にあり、なかなか会社にたどり着けません。送迎ももちろんありません。

原付バイクで島からしまなみ海道は無謀な旅でして、毎日通うのは普通でも難しいです。自動車免許を取得できれば一番良いのですが、これも難しいです。能力的には免許を取得できる方でも、なかなか現実には免許を取って運転して約1時間の道のりを通勤するというのを考え付きません。

そもそも、島からほとんどの方が一人で出かけることがない状況で高等部まで育ちます。あったとしても、ご家族の自家用車で移動しますから、ひとりで出かける経験も乏しいのが現状です。

では、生活そのものを自宅を離れて暮らすことも考えられるでしょうが、これもなかなか踏み切れませんし、グループホームもほとんど空きがありません。来年4月から通うので、10月くらいからグループホームを探すといっても、今すぐにグループホームに入りたい人もおり、4月には埋まっている状況です。将来はいるであろう人にグループホームが提供できるほど資源はまだ潤沢ではありません。

現実を考えると、その人がやってみたいことを達成するには、たっくさんのバリアがあります。制度や施策の構造的なバリア、個人の背景的なバリア、物理的なバリア、心理的なバリアがあるように感じます。3年生になると希望することもできなくなるような、そんなことにならないようにする地域が必要だと感じました。島だけで、特別支援学校だけで、教員だけで、町内だけで、企業だけで、行政だけで、考えるのではなく、みんなで考える課題だなぁと思いました。

駅前にあるちゃんくすです。この立地を考えるといろんなことができるかなと。

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